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マイケル・キスク

マイケル・キスク

辺境ドイツから生まれた西欧メタルの種



参照:ウィキペディア

参照:マイケル・キスク代表曲まとめ(自作)


 男子というのは若いころにハードロックやメタルに浸かる時期というのがありまして、私もその時期、非常に感銘を受けたのがこのマイケル・キスク氏です。彼はドイツのハロウィンというバンドのボーカルだったので、初めて『Eagle Fly Free』という曲を聴いた時は興奮して何度もリピート再生をしたものです。メタルなので若干やかましくはありますが、よかったら1番だけでも聴いてみてください。




 マイケル・キスク氏というのは、まぁとにかく高い声がよく鳴るボーカリストです。ルックスもイケメンだ。この曲もサビの「イーグルフライフリー」のとこはhiCで、その4小節あとにはhiFまで声が届くという凄まじいボーカルを披露します。しかもそのビブラートが長く美しいことったらない。

 とまぁ、日本人の私もビックリしましたが、彼が登場した1987年というのはまだイギリスを除いたヨーロッパからは有名なバンドは登場しておらず、そんな環境でいきなりキスク氏が現れ、しかもデビュー当時は19歳だったのでメタル界では新たな流れを期待されていました。


 すべてがハロウィンの影響というわけではないですが、その後90年代になるとブラジルのアングラというバンドや、フィンランドのストラトヴァリウスなどが世界的な知名度を得て、メタルはヨーロッパ的なサウンドを取り入れた一大ジャンルとなっていきます。

 日本やアメリカではメタルがヒットチャートに載ることはありませんが、北欧ではメタルバンドがトップを争い、メタルフェスなどはヨーロッパからアジアまで含めるとかなりの人が集まるイベントになっています。世界規模で見て、ジャンルとしてはかなり広く根強いシェアを誇るようになったんですね。


 で、当のキスク氏は93年にバンドを脱退し、ソロ活動や一時期的なバンドプロジェクトに参加するなどしてその声を聴かせてくれます。本人はメタルが特別好きなわけでもないためもっとソフトな音楽をやりたかったようなのですが、ファンからも関係者からもパフォーマンスを熱望され、やはりメタル界がホームグラウンドとなっています。

 2005年にPlace Vendomeというバンドでボーカルを録っていますが、このアルバム『Place Vendome』の歌声も実に良い。ハロウィン時代より爽やかで艶やか、演奏のオシャレさも相まってとても可愛げがあり魅力的です。





 声の特徴としては英語圏のメタルシンガーよりも発音が平たく、ビブラートの優美さもあって柔らかい歌声です。ハロウィン時代はキーが高いうえに声を濁らせるので悪ガキっぽい印象もありますが、本場イギリスの、ブルース・ディッキンソン氏(アイアンメイデン)や、ロブ・ハルフォード氏(ジューダスプリースト)に慣れた耳には相当まろやかに感じたはずです。


 メタルは70年代のハードロックからさらに激しさを求めて進化した音楽です。パンクロックやディスコがブームの中ではその始まりからしてアンダーグラウンドな存在で、当時その戦場は主にはイギリス、次いでアメリカという感じでしょうか(個人的には、アメリカで流行ったLAメタルは別系統だと思っているのでここでは扱いません)。

 キスク氏以前からメタルシンガーというのはハイトーンを売り物にしてはいました、しかしその声やキャラクターはマッチョで不良っぽいのが普通で、オペラっぽい優美さを求め始めたのはやっぱりマイケル・キスク氏以降なんでしょうね。





 こちらはアイアンメイデンのブルース・ディッキンソン氏です。ビブラートもハイトーンも見事ですが、声が鋭く、濁っているために凶暴な印象です。80年前後のメタルってこういう印象ですね、男子はこういうの憧れてしまいます。身長は168cm。





 次はジューダスプリーストのロブ・ハルフォード氏。始めのギターサウンドからしてワルですね、こちらもメタルのお手本のようなサウンドでセンス抜群。そして声に関してもふてぶてしさと凶暴さがあり、印象としては怒りの音楽ですよね。身長180cm。

 これを聴いたあとにマイケル・キスク氏の声を聴くと…なんともまろやかで雄大、それに発音が平たいので英語圏のシンガーよりも日本人にはシンパシーのある声かと思います。

 若干垢抜けない感じですが、このキスク氏のようなやんちゃなイメージと優美なイメージのバランスをもった声というのは中々なく、やはり高い音になると皆さん声が鋭くなってしまうんですね。ツルっとした純音ぽい声になったりひねり出してノイズが増えてしまう。





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 冒頭に「高音がよく鳴る」と言ったのは声がでかいという意味ではなく、ハイトーンでも響きの豊かさが失われないということ。hiCやhiDといったハイトーンでも整数次倍音を保っているわけです。それによって地声っぽさを保った高音になるんですね。

 そうした点で、2010年代後半になったいまでも彼の声は相当稀有なものだなぁと感じるんです。


 詳しい歌唱歴はわかりませんが、17歳で学生バンドを始めて20歳には冒頭の『Eagle Fly Free』です。早熟のシンガーには子供のころから教会や聖歌隊で歌っている人も多いのですが、仮にそうだとしてもキスク氏の早熟ぶりは半端ではありません。


 声や立ち振る舞いから見ておそらく声帯や筋肉がやわらかく、ヘッドボイスの感覚も強い人なんじゃないかと思います。なぜならライブでの動きや立ち姿もペタッとしていて、低音でも声に硬さがないからです。声区によって声がちゃんと変化していますが181cmという高身長からすると低音の響きが少ない。

 この身長だと低音と高音のニュアンスがかなり違う人が多いのですが、彼の場合変化は感じてもニュアンスはそこまで変わらないですね。先ほどのロブ・ハルフォード氏の身長は180cmで、やはり低音と高音のニュアンスはかなり違っています。高くなるとヨーデルのような純音に近い声になるわけです。

 また、身長に比例して声帯も長くなるため高音ではビブラートが苦しくなるはずですが、実際ビブラートは驚くほど強烈です。ブルース・ディッキンソン氏も高音のビブラートが見事ですが身長は168cmと、キスク氏とは一回り以上の違いがあります。

 どこかで17歳からかなり練習したということを話していましたが、こうした特徴は練習でどうこうなるものではないことはわかるかと思います。


 とまぁ彼の20歳までのキャリアと身長を考えると、声帯が異常にやわらかい上にヘッドボイスの感覚も強い人なのだと予測できます。高音が得意な人ってちょいちょいいまして、ボイトレ始めて短期間でhiDやhiEが出せるような人っているのです。

 また、当時はまだピッチやリズムがそこまで良くないあたり、その制御に相当な努力をしている様子もわかるわけです。高音が得意でも正確に扱うのは難しいはずです。


 珍しい体質にそれを活かすための努力。つまり才能と鍛錬を兼ね備えたマイケル・キスク氏の声というのは、個性においても完成度においても本当に稀有な傑作なのではないかなと思います。

キスク氏の顔の使い方

声区、喚声点

 はい、ではキスク氏の表情から声の出し方を探ってみましょう。今回は2:20からのサビの部分を見ていきしょう。ライブ映像なので原キーより-1のキーで歌っています、たった半音ですがこれはかなり重要で、最高音がhiFだったのがhiEになることで声区がホイッスルボイスからヘッドボイスに変わるわけです。なのでキスク氏のホイッスルボイスの表情は見られないので、原キーの感覚までは探れません。




 サビのはじめ「フリー」のとこはhiBでミドルボイス3の音域です。この声区だと眉毛を上げる人が多いんですが、彼の場合は目を閉じて眉毛も下がっています。それと同時にホウレイ線が現れるので両目と頬のあいだを引き締めるような力感があると思います。

 これをマネして声を出してみましょう、私がやると歌劇のわざとらしい歌声みたいなのが出ます、みなさんはどうでしょうか。


 このやり方で高い声を出してみると思いのほかやりやすいわけです、というかこの力感を保ったまま低い声が出せません。しかし、単純にミドルボイス3の音域を発声するには便利なのですが、声にかなり特徴的なわざとらしさがあるため、日本人やアメリカ人が聴くとけっこう違和感があるでしょうね。ここらへんは割り切って歌うかうまく調整するしかないかなぁ。

 そのあとの最高音の部分、歌詞だと「just make it」のとこですが、ここも目元の力感は似たような感じです。でも口がさっきよりタテに大きく開いていますね、これは口を開くというより頬が引き締まってつり上がった感じかなと思います。ここもヘッドボイスをこの表情で出す人は珍しいです、こういう違いが彼の声を特殊なものにする一要因となるのでしょう。

main

 表情に関してはこれくらいでやめにしますが、マネして練習する方に言いたいのは、力感があるのとただ力を込めるのとは違うということです。仮に力を込めて高い声を出そうとしても、キスク氏と同じ表情にはなりません、おそらくもっと固く、怒ったような顔になるのではないでしょうか。

 そうではなくもっと切なそうに、あくまで表情を近づけた方が良い。興味がある方は切なさで歌うように遊んでみてください。




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 いやぁしかし、改めて聴くと良いシンガーですね。上の『Place Vendome』での彼独特ののぺっとした感じ、わかるでしょうか。そののぺっとした感じがなんとも親しげで、サビのhiAなんかはそののぺっとした感じと優美さが混じってたまらなく好きなんですよ。

 他にもフリップという一瞬ひっくり返るようなテクニックやアクセントに声を濁らせる部分など、トーンのニュアンスはかなり凝っています。2005年以降のどこかノスタルジックで温かみのある歌声はハイトーンをより豊かにしていて、聴いてて泣けてきます。

 こんなシンガーがなかなかポップスで成功できずにまたメタルに戻っていったのは、個人的にはちょっと残念です。もっとフォークやR&Bっぽいものも歌ってみてほしかったな。


 最後にキスク氏のフォロワーとしてアングラのアンドレ・マトス氏とラプソディ・オブ・ファイアのファビオ・リオーネ氏を挙げておきます。本人がフォロワーと認めるかはわかりませんが、どちらもキスク氏に通じる優美なスタイルのボーカリストです。

 自分が大好きだったシンガーから新たなスタイルが生まれて、その後実力のあるシンガーが出現してメタル界の一大潮流となる。ミュージシャンと共に歳を取っていくのも中々オツなものです。


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