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歌におけるトーン(音色)の重要性とは?

同じ曲でもトーン次第で感動するかしらけるかが決まる

 このトーン(音色)というのは、例えば静かな曲をエネルギッシュに歌ったり明るい曲をボソボソ歌うとミスマッチとして、リスナーはその違和感でしらけてしまいます。逆に、静かな曲の中で「わたし寂しくないからね」という歌詞を本当は寂しそうな声で歌われると、そのいじらしさにリスナーは心を打たれてしまうのです。


 同じ曲を同じ音程で歌ってもそうした違いが出るのですから、これはピッチと同じか、場面によってはそれ以上に重要な要素ではないでしょうか。

 例えば下に貼った『Don't Know Why』の音源ですが、これは2番だけ乱暴に歌ってピッチ修正をしています。ピッチは他のパートよりも良いはずなのですが違和感が凄い。誰も「声がデカいだけのおっさん」の歌なんか聴きたくないということ、想像ができるかと思います。



 だのに、どういうわけか歌をやっている方がいきなり爆音で歌い出すということはよくあることです。どれだけ良い声で歌っても、リスナーが「うるせぇなぁ…」と思ってしまえばそれは歌が下手だということです。

 これは極端な例ですが、音程は合わせられるようになったけど歌唱力が一皮むけない、という理由はそのトーンコントロールにある可能性が高いわけです。私はこのトーンの重要性を、是非みなさんにも知っていただきたいのです。

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 メロディを歌う上で音程は確かに大事ですが、そのせいでセールストークのような「うさんくさい」歌声になるとリスナーは白けます。最終的に歌の説得力を裏打ちするのはトーン(音色)です、リスナーはピッチに感動するのではなくその声の演出によって感動するわけです。ただきれいに歌えば「良い歌」になるわけではありません。


 例えば、浜崎あゆみさんやコブクロがライブでただきれいに歌を歌い始めたらどうでしょうか?観客はみんなガッカリします、なぜならファンはただメロディが聴きたいのではなく、そのシンガーのトーンを聴きたくて会場まで来ているからです。

 「今日は音程を合わせるために裏声で歌うよ!」なんて言いだしたら、もうライブにはいかなくなるでしょう。



 ためしに、録音した歌をピッチ修正してみました。音程は正確かもしれませんが、声のトーンによるニュアンスや思想が感じられず、「あなたはこうやって歌いたいですか?」と聞かれても頷くことができません。ちなみにビブラートが不自然になったのでいっそのことなくしちゃいました。

トーン(倍音)にはパワーがある

 人の印象というのは声によって大きく左右されます、心理学でも「印象の4割は声によるもの」という説があるほどです。体がちいさくても声が堂々としていれば頼りがいがある印象になりますし、話の内容に矛盾があっても声に自信があればなんとなく信用できる気になってしまうわけです。

 政治家や学者というのはそういうことがよくわかっていますので、理論の信頼性よりも声の力で聴衆を説得することを重視します。それらで成功する人というのは専門能力よりも自信たっぷりな声で聴衆に受け入れられた人だと言えるでしょう。


 こうした声のトーン、倍音とも言いますが、この倍音にはパワーがあるのです、それによって私たちはシンガーに憧れたり共感したりします。特に私たち日本人はこうした倍音の変化をメロディとして扱い、それを愛してきた音楽文化を持っています。

 逆に白人社会ではトーンよりも音程や声量を重視していましたが、60年代のロックブームから黒人音楽の影響を受け、その後はトーン(倍音)の重要性が増していっています。いまやトーン(倍音)の大切さは万国共通なのです。


 この倍音を愛した日本文化から考えても、こうしたトーンを無視するクリアな歌声は倍音が乏しく魅力に欠け、これもミスマッチによる違和感で歌から心が離れてしまいます。

クリアな声に比べて、特に非整数次倍音のくもった声やしゃがれた声は音程が不明瞭になりやすく、それを敬遠するシンガーもいるのですが、実際にリスナーの心を掴むのは曲調にマッチした倍音の歌声なはずです。


 歌手は曲や場面によってこのトーンを切り替えていくべきであって、それを適切に判断・操作できることが「歌がうまい」ということだと思います。一流のボーカル(歌唱)というのは「整数次倍音」「非整数次倍音」「倍音の乏しい声」というのを使い分け、その曲や歌詞に臨場感を与えるものではないでしょうか。


 とはいえ、最終的にはトーンを演出しながらピッチを合わせていくことになるので、その兼ね合いの中でどれだけ良くできるかを磨いていくことになります。ピッチばかり気にするとトーンに面白みがなくなりますし、トーンを豊かにしながらピッチを合わせるのも難しいんですね。

 しかし、そういう表現を突き詰めていくのが音楽の面白いところだと思います。歴代の天才シンガーたちはそうしたトーンとピッチのギリギリのバランスを狙って魅力的な歌声を生み出していました、私自身もそういう部分を楽しんで磨いていきたいなと思っているのです。


 倍音に関してまとめられたページがありますので是非。
 松岡正剛の千夜千冊 1492夜『倍音』

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 ところが、シンガーやボイストレーナーの中でこうしたトーンの研究をしている方というのはなかなか見当たりません。だいたいは声楽をベースにした、腹式呼吸やブレスコントロールによって声の響きを良くしましょう、という程度のものです。

声の扱いとその効果について説明されることはほとんどなく、その領域になると「あなたのスタイルはあなたのもの」といって丸投げされてしまいます。


 仮に先生にスタイルを強制されると苦痛なのは当たり前ですが、さすがに何の研究もないというのはおかしな気がします。そして研究がないから助言もできないわけです。

 「ここは声を濁らせて共感させるべきか」「堂々と英雄的に歌ったほうがいいか」「それはどれくらいか?」「母音の形はどうしようか」、考えるべきことはいろいろあるはずですがこうしたことを話す人はとても少なく、また、このことについて考えられない人の歌声にはなかなか共感することができないのです。


 もし、あなたがもっと歌を楽しく、魅力的にしたいのならこうしたトーンをいろいろ研究してみてください。ただボイトレっぽく「健全に」声をきれいにするだけでなく、いろんな声で歌ってその効果を試してみてほしいと思います。

 時には面白おかしく、時にはメソメソ、ルンルン気分などなど。「Aメロは声量を抑える」というなら、詰まった声にするとか息っぽい声にするとかアイデアもいくつかあるはずです、決してただ声を小さくするということではなく、効果的なトーンを探してみてほしいのです。

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 私は数年間、ボイストレーニングのルールに捕らわれてこの「健全に歌う」ということを至上命題にして、歌の工夫を避けていた時期がありました。

 今でも慣れない曲はそのように歌ってごまかすことがありますが、音程やテンポがいくら正確でも、パワーと臨場感を感じない歌声というのは面白くなく、その延長上にはどこまでいっても「良い歌」は存在しないのではないかと思ったのです。


 そして何より、こうしたトーンについて考えていくと歌を聴くのが楽しくなります。音楽が好きなのであればそれを楽しく聴く方法は多いほど良いわけです。そういう意味でも、私はトーンや音色は重要だなぁと実感し、ボイストレーニングで行き詰りを感じた人やボイストレーニングが肌に合わなかった人に、その楽しさをちょっと耳打ちしたかったのでした。


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