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歌におけるトーン(音色)の重要性とは?

同じ曲でもトーン次第で感動するかしらけるかが決まる



 こんにちわ、北区ボーカル研究会です。今回もよろしくお願いいたします。


 このトーン(音色)というのは、例えば静かな曲をエネルギッシュに歌ったり明るい曲をボソボソ歌うとミスマッチとして、リスナーはその違和感でしらけてしまいます。逆に、静かな曲の中で「わたし寂しくないからね」という歌詞を本当は寂しそうな声で歌われると、そのいじらしさにリスナーは心を打たれてしまうのです。


 同じ曲を同じ音程で歌ってもそうした違いが出るのですから、これはピッチと同じか、場面によってはそれ以上に重要な要素ではないでしょうか。


 だのに、どういうわけか歌をやっている方がいきなり爆音で歌い出すということはよくあることです。どれだけ良い声で歌っても、リスナーが「うるせぇなぁ…」と思ってしまえばそれは歌が下手だということです。


 これは極端な例ですが、音程は合わせられるようになったけど歌唱力が一皮むけない、という理由はそのトーンコントロールにある可能性が高いわけです。


 音楽だからね、音色は重要なんです。



はじめにまとめ

・人は2秒で歌がうまいかどうか判断をする

・日本は倍音を重視する音楽文化

・欧州は音程とハーモニーを重視する音楽文化

・トーンを工夫すると歌うのが楽しい

・大事なのにボイトレだと身に着けづらい



 スピーチに関する実験では人が話者を評価する際、その内容よりも声に自信があるかどうかが重要だそうです。しかもそれを判断するのは最初の2秒。


 その後の話は常にその評価を前提にして聴いているので、最初の2秒でイマイチだと思われると中々評価されにくくなってしまうわけなのです。歌の実験はまだありませんが、歌においても有用なことと思います。


 メロディを歌う上で音程は確かに大事ですが、そのせいでセールストークのような「うさんくさい」歌声になるとリスナーは白けます。「こいつはやる気がないのか?」「なんだこんなもんか」と思われたらちゃんと聴いてもらえないわけなのです。ただきれいに歌えば「良い歌」になるわけじゃないんですね。


 例えば、浜崎あゆみさんやコブクロがライブでただきれいに歌を歌い始めたらどうでしょうか?観客はみんなガッカリします、なぜならファンはただメロディが聴きたいのではなく、そのシンガーのトーンを聴きたくて会場まで来ているからです。

 「今日は音程を合わせるために裏声で歌うよ!」なんて言いだしたら、もうライブにはいかなくなるでしょう。

トーン(倍音)にはパワーがある

 人の印象というのは声によって大きく左右されます、心理学でも「印象の4割は声によるもの」という説があるほどです。体がちいさくても声が堂々としていれば頼りがいがある印象になりますし、話の内容に矛盾があっても声に自信があればなんとなく信用できる気になってしまうわけです。


 政治家や学者というのはそういうことがよくわかっていますので、理論の信頼性よりも声の力で聴衆を説得することを重視します。それらで成功する人というのは専門能力よりも自信たっぷりな声で聴衆に受け入れられた人だと言えるでしょう。


 こうした声のトーン、倍音とも言いますが、この倍音にはパワーがあるのです、それによって私たちはシンガーに憧れたり共感したりします。特に私たち日本人はこうした倍音の変化をメロディとして扱い、それを愛してきた音楽文化を持っています。


 逆に白人社会では聖歌や合唱によるハーモニーが重視され、トーンよりも音程や声量の秩序を大事にしてきました。しかし60年代のロックブームから黒人音楽の影響を受け、その後はトーン(倍音)の重要性が増していっています。いまやトーン(倍音)の大切さは万国共通なのです。


 倍音を愛した日本文化から考えても、こうしたトーンを無視するクリアな歌声は倍音が乏しく魅力に欠け、これもミスマッチによる違和感で歌から心が離れてしまいます。


 たとえば何か相談した時、相手がアナウンサーのようにハキハキと話し出したら「あ、こいつ聞く気ないな」というのが伝わるはずです。もう声に魂胆が出ちゃうんですよね。


 クリアな声に比べて、特にハスキーボイスのくもった声やしゃがれた声は音程が不明瞭になりやすく、それを敬遠するシンガーもいるのですが、実際にリスナーの心を掴むのは曲調にマッチした倍音の歌声なはずです。


 歌手は曲や場面によってこのトーンを切り替えていくべきであって、それを適切に判断・操作できることが「歌がうまい」ということだと思います。一流のボーカル(歌唱)というのは「整数次倍音」「非整数次倍音」「倍音の乏しい声」というのを使い分け、その曲や歌詞に臨場感を与えるものではないでしょうか。


 ちなみに声の表現力についてはこちらでも書いています。
関連:歌の表現力を上げるためのアイデア



新作:生まれついての声質という才能


関連:声区と換声点について


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 とはいえ、最終的にはトーンを演出しながらピッチを合わせていくことになるので、その兼ね合いの中でどれだけ良くできるかを磨いていくことになります。ピッチばかり気にするとトーンに面白みがなくなりますし、トーンを豊かにしながらピッチを合わせるのも難しいんですね。

 しかし、そういう表現を突き詰めていくのが音楽の面白いところだと思います。歴代の天才シンガーたちはそうしたトーンとピッチのギリギリのバランスを狙って魅力的な歌声を生み出していました、私自身もそういう部分を楽しんで磨いていきたいなと思っているのです。


 倍音に関してまとめられたページがありますので是非。
 松岡正剛の千夜千冊 1492夜『倍音』

 もし、あなたがもっと歌を楽しく、魅力的にしたいのならこうしたトーンをいろいろ研究してみてください。ただボイトレっぽく「健全に」声をきれいにするだけでなく、いろんな声で歌ってその効果を試してみてほしいと思います。


 時には面白おかしく、時にはメソメソ、ルンルン気分などなど。「Aメロは声量を抑える」というなら、詰まった声にするとか息っぽい声にするとかアイデアもいくつかあるはずです、決してただ声を小さくするということではなく、効果的なトーンを探してみてほしいのです。

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 私は数年間、ボイストレーニングのルールに捕らわれてこの「健全に歌う」ということを至上命題にして、歌の工夫を避けていた時期がありました。


 今でも慣れない曲はそのように歌ってごまかすことがありますが、音程やテンポがいくら正確でも、パワーと臨場感を感じない歌声というのは面白くなく、その延長上にはどこまでいっても「良い歌」は存在しないのではないかと思ったのです。


 そして何より、こうしたトーンについて考えていくと歌を聴くのが楽しくなります。音楽が好きなのであればそれを楽しく聴く方法は多いほど良いわけです。そういう意味でも、私はトーンや音色は重要だなぁと実感し、ボイストレーニングで行き詰りを感じた人やボイストレーニングが肌に合わなかった人に、その楽しさをちょっと耳打ちしたかったのでした。


次:声区について




新作:プロと素人の歌声は何が違うのか


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